阿部 貞子(あべ・ていこ)

アットゥ織り・刺繍作家

1958年北海道沙流郡平取町二風谷生まれ。アットゥ織り・刺繍作家の二谷文子氏の妹として、祖父母、父母、4姉妹の3世代で暮らした。母である故・二谷和歌子氏がアイヌの着物や織物を製作するようすを身近に見て育った。娘が小さいときに二風谷に戻り、平取アイヌ文化保存会の踊り部会に入り、座り歌などを学んでいた。その後は、機会があれば刺繍などの講習会へ参加していたが、退職後本格的に作品作りをしたいと60歳を機に考え、現在は仕事を持ちながら製作を行っている。

主にチヂリ、チカペ、はんてんなどの刺繍作品を中心に、トマ(※1)も作っている。刺繍は、特にチェーンステッチの向きなど、教わったことを忠実に再現しつつ自分の作品づくりをするように心掛けている。文様は姉の二谷文子氏に描いてもらい、自身の家に伝わる図柄が中心。姉のアドバイスをもらいながら、日々の製作に励んでいる。

二風谷では、古くから匠から担い手へ伝統文化の継承が行われ、受け継いだ諸先輩が産地を支えてきたおかげで今なお工芸が続いている。尊敬と感謝の気持ちを持つとともに、自分としても伝統を受け継いでいきたいと思っている。

二風谷民芸組合所属。

※1 ガマの葉でつくる花ござ