貝澤 すみれ(かいざわ・すみれ)

刺繍作家 1996年~

1969年京都府宇治市生まれ。アイヌ工芸家の故・貝澤幸司氏と1991年に結婚して二風谷に移住、工芸を始める。もともと手芸に興味があり、特に編み物が大好きで、二風谷に来てからは家業の民芸店で販売している作品を手本に、見よう見まねで刺繍を始めた。最初は趣味の延長だったが、1996年からは自分の作品も販売するようになった。着物の仕立ては二風谷訓練校の上級者コースで学んだ。

主な作品は、チカペ、ルウンペ、カパラミなどの着物、半纏、小物、アイヌ文様入りニット帽など。着物の文様は本を見てアイデアを練るが、実際に手を動かして紺地の布を配置しながら、施す文様のイメージを具体化する。着物やタペストリーなどの大きな物の文様は、左右で一箇所だけ異なる部分をつくって個性を出したり、モレウ(渦巻の文様)を好むため様々なところに描いたりしながらデザインを考えるのが楽しいと話す。
完成した作品が自分のイメージ通りなら嬉しいが、まだ「満足」と言えるものがなかなかなく、物足りなく感じることも多い。課題を見つけるたびに、つぎに活かしたいと意欲的に製作している。

二風谷は素晴らしい工芸品がたくさんあり、この貴重な伝統を受け継いでいく人が多く育ってほしい。そして伝統を重んじながらも、それぞれが持つ感性で様々な要素を加えて、産地としての工芸品の幅が広がることを願っている。

二風谷民芸組合所属。

●北海道アイヌ伝統工芸展(公益社団法人北海道アイヌ協会)
2022年度 伝統工芸品部門 奨励賞「はんてん」「カパラミ
2024年度 伝統工芸品部門 奨励賞「チカペ」