川上 ききょう(かわかみ・ききょう)

アットゥ織り・刺繍作家 2017年~

1957年北海道沙流郡平取町二風谷生まれ。幼い頃より糸つなぎなど、母である故・川奈野節恵氏のアットゥ織り(※1)や刺繍、着物の製作を手伝う。その頃からものづくりを好み、レースなどの編み物やペーパーフラワーなど様々な手芸に親しんできたが、いまは伝統工芸ひと筋。2017年から二風谷工芸館(平取町アイヌ文化情報センター)にてアイヌのお守りであるイケマを販売するようになり、その後、刺繍の小物やアットゥ織りのバッグなども販売するようになった。アイヌの女性が昔作っていた工芸品をすべて製作していきたいと、意欲的に取り組んでいる。

主な作品は、アットゥの着物やトマ(※2)をはじめとするアイヌの伝統民具だが、イケマのようなストラップやキーホルダーなどの現代の生活で使える小物なども手掛ける。アットゥ織りの作品は風合いの良さを生かすため、最近では目立たない色合いの刺繍糸を用いている。製作する際はかつてのアイヌの暮らしやものづくりを思い描きながら、出来るだけ自然に近いものや固くて織りづらい材料でも捨てることなく使うよう心掛けている。

私たちが受け継いでいるその伝統は、先人たちが苦労して手にしたもの。例えば、いまアットゥ織りにはオヒョウの樹皮を使っているが、かつて、これらの素材に辿り着くまでにどれだけの試行錯誤や苦労を重ねただろうと思うと尊敬の念が湧いてくる。感謝の気持ちを忘れずに、これからも伝統を重んじながら様々な作品を作っていきたい。

二風谷民芸組合所属。

※1 アットゥ オヒョウ等の樹皮の内皮からつくった糸を用いて機織りされた反物や衣服
※2 トマ ガマの葉でつくる花ござ)

公益社団法人北海道アイヌ協会認定 優秀工芸師

●北海道アイヌ伝統工芸展(公益社団法人北海道アイヌ協会)
2018年度 伝統工芸品部門 最優秀賞(北海道知事)「アットゥ(樹皮衣)
2019年度 伝統工芸品部門 優秀賞(北海道教育委員会教育長賞)「イナウソ(模様つきのゴザ)」
2020年度 一般工芸品部門 最優秀賞(北海道知事)「ショルダーバッグ」
2020年度 伝統工芸品部門 優秀賞(北海道教育委員会教育長)「アットゥアミ

●アイヌ工芸作品コンテスト(公益財団法人アイヌ民族文化財団)
2020年度 織物・編み物・刺しゅうの伝統的作品部門 奨励賞「オニカプンチタペ(半分模様付きゴザ)」
2021年度 一般作品部門 奨励賞「アットゥ アミ (厚司の着物)」
2022年度 一般作品部門 入選「ショルダーバッグ」
2022年度 織物・編み物・刺しゅうの伝統的作品部門 奨励賞「エムアッ」
2024年度 一般作品部門 優秀賞「ショルダーバッグ」