二谷 文子(にたに・あやこ)

アットゥ織り・刺繍作家 2017年~

1957年北海道沙流郡平取町二風谷生まれ。祖父母、父母、4姉妹の3世代家族で育った。自宅裏にはヌササン(神窓に近い屋外に設置する幣柵)があり、シヌラッパ(アイヌの儀式)が日常的におこなわれていた。祖父はイナウ(カムイに捧げる木幣)やパスイ(捧酒箸)、祖母はコンダシ(サラニとも呼ばれる植物の編みバッグ)などをつくり、母はアットゥ織りと刺繍をしていたので、常にアイヌ文化や工芸に触れられる環境で育った。
アットゥ織りの糸づくりと糸のばしを中学に入る頃には始め、母と一緒に生活している間は工芸を手伝っていた。その後、自身は平取町の学校調理師として勤務していたため、定年を迎えた60歳を過ぎ本格的に工芸を始めた。

主な作品は、アットゥで仕立てた着物とトートバッグで、依頼されて製作することが多いのは刺繍作品である。着物の文様は、常に母である故・二谷和歌子氏の文様をベースに、自身で製作している。アイヌの着物の特徴をいちばん表しているのは、やはり樹皮からつくられるアットゥだと思っていることから、作品として製作したいのはアットゥ生地のみで仕立てた着物だと言う。
アイヌ工芸には家族の思い出がこもっている。昔はアットゥの原料はシナの樹皮だったこともあって、ニペ(シナ)に触れると祖母や母を懐かしくなり、作品づくりの時間がとても楽しい。

二風谷には地域全体で子どもを見守る環境があり、心配なく子育てができた。これからもそうした思いやりのある二風谷であってほしいと願う。

二風谷民芸組合所属。

北海道アイヌ伝統工芸展(公益社団法人北海道アイヌ協会)
2019年度 一般工芸品部門 奨励賞「ベスト」
2021年度 伝統工芸品部門 奨励賞「トマ」
2022年度 一般工芸品部門 最優秀賞(北海道知事賞)「トートバッグ」
2023年度 伝統工芸品部門 優秀賞(かでる賞)「イエオマプ(おぶいひも)」

アイヌ工芸作品コンテスト(公益財団法人アイヌ民族文化財団)
2023年度 奨励賞(織物・編み物・刺しゅうの伝統的作品部門)「アットゥアミ